2007/10/09

僕は犬みたいなもん


dogsdogs
小沢健二

曲名リスト
1. 昨日と今日
2. 天気読み
3. 暗闇から手を伸ばせ
4. 地上の夜
5. 向日葵はゆれるまま
6. カウボーイ疾走
7. 天使たちのシーン
8. ローラースケート・パーク

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小沢健二の初ソロアルバムのタイトルは「犬は吠えるがキャラバンは進む」。いつのまにやら、このアルバムは「dogs」と名を変え、ジャケットも変えました。

当時はその歌詞の真摯な祈りのメッセージに対する作者なりの照れ隠しとしてのタイトルやタイトル変更かと思っていましたが、最近になって「そういうことだったのか」と理解出来てきました。

フリッパーズ時代の彼は人間の儚さに立ち向かい、世界の全てを知で理解したいといった、オーバーに言えば「神」を知性で理解したいという知への信頼に溢れていたように思います。
一方、このソロアルバムは、絶対を理解し得ないからこそ、人生を愛したいといった、人知を超えた「神」への敬虔さが歌われているように思います。

ただ、その敬虔さも知で理解したものであり、「自分は特別な存在である」という気持ちから抜け出せていなかった。そんな自分を恥じたのではないかと思われるのです。

「犬は吠えるがキャラバンは進む」・・・いったい自分は犬なのか、キャラバンなのか?最初の盤に付いていたライナーノートには、どちらに受け取ってもらっても良い、と書いてありました。
とは言え、ジャケットからも、旗を掲げて突き進む小沢自身がコラージュされていることから、皆を引き連れていくキャラバンの隊長に自らをなぞらえていたことは明らかです。

人間が真摯に何かを信じて突き進む姿、祈る姿は美しく、とても大切なものです。しかしどんなに素晴らしくても、あくまでそれは一つの姿勢でしかないのです。結局「dogs」に変えたのは、自分は犬であり、得体の知れない世界を動かす力「キャラバン」に対する「犬の遠吠え」でしかない、そして人は皆犬であるが、そうであることで「祈り」が軽んじられる訳ではないということなのだと思うのです。

とにかく、叙事詩や叙情詩的な日本のフォーク〜ニューミュージックシーンとは違う方向で、非常にセンテンスの長い言葉で描かれた日本語ロックの一つの到達点であり、名盤です。

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